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JR垂水駅転落事故についての検証
令和2年3月19日午後5時32分、JR神戸線垂水駅で転落死亡事故が発生した。この事故について、JR垂水駅駅員に当日の詳しい状況を聞いた上で、駅員立ち会いのもと検証を行い、その後、駅の安全な利用のための話し合いをお願いしたい旨、JR西日本お客様センターへ申し入れたが、『事故については個人の情報となるので話せない。検証は行なってくれて結構だが、立ち会いも話し合いも行う予定はない』との回答であった。
よって、8月3日、兵庫県視協会長 田中、歩行訓練士、日視連弱視問題対策部会委員等4名で垂水駅を訪れ、現場の検証を行った。なお、左記の検証参加者のうち、全盲者が1名、弱視者が1名であった。
◎事故の状況
亡くなった男性は50代で弱視、兵庫県立視覚特別支援学校に務める国語担当の教員で、通勤に垂水駅を使っていた。関係者の話では、視力はここ何年かでかなり落ち、最近は0.1未満だった様だが、足探りで白杖は使っていなかった。
男性はこの日、午後2時間の休みを取り、異動になった教員仲間のプレゼントを買いに行ったとのこと。午後5時半に同僚と垂水駅改札で待ち合わせていた。
事故時の監視カメラ映像では、男性が電車を降りたあと1分ほど立ち止まり乗客の流れが収まったあと、足で点字ブロックを確かめるような様子であったという。このあとすぐ男性は、ホーム中央あたりで西明石行き普通電車にはねられた。なお、男性がホームに降り立った正確な位置は不明である。
◎駅の様子
同駅は1階が改札でホームは高架式。ホーム両側を電車が走る、いわゆる欄干のない橋・島状のホームである。(写真1参照) 幅は約4メートル。直線ではなくゆるいカーブを描いている。同駅から山陽電車への乗り換えができるため、乗降客は検証を実施した午後2時頃でも多かった。「狭いな」というのが検証を行った全員の印象。特に階段と線路の間は、人が立っているとすれ違うのに神経を使う。(写真2参照)
点字ブロックは、上り・下り両方とも端から約1メートルのところに内包線付き警告ブロックが設置されている。以降、これを『警告ブロックA』とする。(写真3参照)
階段は東・中央・西の3箇所あり、エレベーターもある。階段下り口には警告用ブロックが2本しっかりと端から端まで設置されている。以降、これを『警告ブロックB』とする。(写真4参照)
ホームの中央部分に1.5メートル幅の白線で仕切った青色の通行者用ゾーンが通っている。(写真1) 乗車位置を示す白線や黄色の線も多数あり、少々うるさい感じさえする。検証に参加した弱視者より、青いゾーンが盛り上がって立体的に見えてしまうとの感想が述べられた。
◎事故について
確かなことは不明だが、本件に関する点字毎日誌上でも推察されたように『足元だけ見て、目立つ線を目当てにたどって歩いていて、点字ブロックが出てきたので階段と思ったのかもしれない』という要因が考えられる。
しかし、この検証でもう一つ、事故の要因となり得る要素が見いだされた。階段降り口の2本の警告ブロックに対して平行にひかれている誘導ブロックである。これを『誘導ブロックC』とする。(写真4参照)
この駅では、改札を通り階段を登ってきた人が、まず2本の警告ブロックBを踏み、次に3本目の誘導ブロックCを伝って乗降口へ移動する警告ブロックAを踏むように設置されている。問題なのは階段降り口から3本目の警告ブロックCまでの距離だ。この距離と、ホーム端から誘導ブロックAまでの距離はほぼ同じであることに対し、検証参加者から懸念の声が上がった。(写真5参照)
推測だが3月の5時半といえば少し薄暗くなり、視野はかなり狭くなっていたと考えられる。男性は降車して乗降客を待つ間に何らかの原因で体の向きが変わり、ホーム端の警告ブロックAと階段へと進む途中にある誘導ブロックCとの見分けがつかなかった可能性が考えられる。警告ブロックAと誘導ブロックCの距離はほぼ等しく、足で探るように歩行したとしても判別しづらかったと考えられる。
いずれにせよ、白杖があればこの不幸な事故は防ぐことが出来たのかもしれない。白杖があれば、安全にホームの端を探ることができたのではないだろうか。加えて、ホーム上の旅客や係員からの声かけや、援助の申し出を受けられる可能性も高まっただろう。
以上
◎本書についてのお問い合わせ先
この現場検証はJR垂水駅の許可を得た上で、当協会が独自に実施したものです。警察等が実施した調査や検証に代わるものではないことをご理解ください。
本書の内容等に関するご質問は、当協会事務局にお願いいたします。JR垂水駅や関連する機関等にはお問い合わせされませんよう、お願い申し上げます。
お問い合わせ先:
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